北海道立文学館の特別展「左川ちか 黒衣の明星」に行ってきました。
展覧会を観てきた感想をご紹介!
左川ちかとは
余市出身の女流詩人で、海外の詩人の翻訳などもし注目を集めるものの早逝。
没後は2冊の作品集しかなかったため、作品自体を鑑賞できる機会が少なく「幻の詩人」などとも呼ばれますが、その美しい作品によって一定の愛好者が彼女の存在、価値を現在に蘇らせています。
兄の友人は作家の伊藤整。
展覧会の概要
会場:北海道立文学館
会期:2023年11月18日〜2024年1月21日
左川ちか 黒衣の明星
観覧料500円(常設展と共通:800円)
左川ちかの生涯について
左川ちかは1911年に現在の余市町登町で生まれます。
生まれつき病弱だったため4歳頃まで歩くことが困難。
母親が結婚を繰り返したために7つ離れた兄、5つ離れた妹とは皆違う父親でした。
6歳から12歳まで本別町の叔母に預けられるなど、幼少期においては普通の子供とは異なる環境で育ちます。
その後は余市に戻り家族とともに暮らし、仲良しの友達ができるなど明るい女学校生活を送りました。
後に詩作や翻訳などの制作を始め、東京にいる兄夫婦をたより上京、家庭教師や創作生活をして過ごすものの、病(胃癌)に倒れ25歳の若さで没します。
展示されていた内容について
左川さんの数編の詩や翻訳した作品の展示がありました。
幼い頃の不遇さのせいなのか、それとも若くして没する運命を感じていたのか。
彼女の言葉からは緑や白などの色があるのと同時に、それらの色を際立たせる影のような暗さ、陰鬱さがあります。
黒い服を好んで身につけていたようですが、着ていた黒いマントの裏地は真っ赤だったり、履いていた靴には大きなリボンがついていたり。
当時は男性が主に掛けていたという丸い眼鏡も特徴的。
東京に出てからは自然豊かな北海道への望郷への思いを綴った手紙などがありましたが、都会に出た若者が郷里へ抱く思いをちかさんも同じように感じていたのでしょう。
そんなナイーブさと詞の言葉から感じられる強さのアンバランスは彼女の魅力のひとつかも。
アイルランドの小説家で詩人のジェイムス・ジョイスの詞の翻訳では、ちかさんの他にも3名の翻訳者が訳したものが展示してあり、翻訳者によって全然違う言葉の紡ぎ方が比較できて、とても面白い内容でした。
展覧会の映像作品について
会場に入ってわりと最初の方に、ちかさんが女学校時代に通った通学路、小樽から余市までの電車から見える車窓の風景が20分ほどの映像作品として展示されていました。
さまざまな緑が次々と通り過ぎていく美しい自然の景色は、ちかさんに深いインスピレーションを与えたのかもしれません。
後半の展示が主に詩や書籍などの展示が多く暗くて重い感じだったので、気持ち的にはこの映像を展示の締めくくりに観たかったような気もします。
高山美香さんの左川ちか版「ちまちま人形」
展示の重苦しい気持ちを最後なんとなく、ふわっとさせてくれた「ちまちま人形」。
黒いドレスのちかさんと、和風姿のちかさん。
全体的に文字が多く、ダークな印象で気分もどんよりしてきたところで展示室の角にそっと佇んでいて、なんだかホッとしました。
この展覧会の始めに、ちかさんが女学校の友人たちに毎日聞かせていたという、自分の見た夢の話しが実は全て創作、ということがちまちま人形のイラスト風キャプション(?)に記してあってびっくり。
「昔は良く夢を見たものだけど、最近は見なくなった。なぜなら現実が夢のようなものだから…」
という内容の言葉を遺していたちかさん。
女性が詩をはじめ文学で生計を立てることが理解されづらい時代の彼女の言葉には、深く考えさせられます。
北海道立文学館へのアクセス&駐車場情報
住所
〒064-0931
札幌市中央区中島公園1番4号
(中島公園内)
公共交通機関
地下鉄南北線中島公園駅から徒歩で約6分
地下鉄南北線幌平橋駅から徒歩で約6分
駐車場・駐輪場
施設の東側に最大7台駐車可能
駐輪場は施設の入り口に数台駐輪可能。中島公園北側に無料駐輪場あり。
まとめ
11月から始まった道立文学館の特別展「左川ちか 黒衣の明星」。
展示作品は文章を鑑賞してみることが多いため、お子さま向けではない反面、言葉が好きな方にはおすすめの展覧会でした。
初夏、新緑の時季に小樽から余市への電車に乗ってみたくなりますよ!
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