【北海道立旭川美術館】アイヌの木彫家・藤戸竹喜の世界展の魅力!

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2024年9月14日から11月17日まで北海道立旭川美術館で開催されている「藤戸竹喜の世界展」

この展覧会は2024年6月29日から8月25日までウポポイの国立アイヌ博物館で開催されていた巡回展です。

アイヌアートなど注目されることの多いアイヌ文化ですが、藤戸竹喜はアイヌの木彫家として活動していました。

今回の展覧会はその藤戸竹喜の生誕90年記念ということで、作家の初期の作品から晩年までの一生涯を通した彫刻作品を見ることができます。

展覧会の展示概要

北海道立旭川美術館の第1展示室で開催されている【生誕90年記念 藤戸竹喜の世界展】

110の展示品(展覧会目録による)のうち約90点が藤戸作品による今回の特別展。

創作を始めた当時に作られていた木彫りの熊から、晩年に向けての作品をほぼ時系列に展示してあり、彼の彫刻の変遷がわかりやすいものとなっていました

序 旭川から阿寒へ

展示室に入るとアイヌを出自とする藤戸を象徴する作品に出迎えられます。

JR札幌駅の西コンコースに展示されている「イランカラㇷ゚テ像」。

エカシ像を取り囲むイクパスイ(アイヌが儀式に用いる酒器)はどれもがそれぞれに個性的なのに、不思議な統一感があります。

旭川近文と木彫り熊

1934年、美幌町で生を受けた藤戸竹喜は幼少期を旭川市近文で過ごします。

近分には当時木彫りの熊を掘る職人が多く、藤戸の父親もその一人でした。

藤戸は父から木彫りを学び成長していく中で、めきめきと頭角を表していきます。

藤戸竹喜とアイヌコレクション

エムㇱ(刀)とタマサイ(首飾り)を集めることから端を発した藤戸のアイヌコレクション。

アットゥシで作られた衣服には子どものものもありました。

1章 樹齢観音

前田一歩園財団の三代目当主、前田光子氏から依頼されて制作した樹齢観音像。

関西に滞在した後に北海道に戻り制作したものですが、木目を生かした観音像には静かな迫力があります。

2章 エカシとフチ

自分の祖父母や親戚をモチーフに作成された像。

等身大を一回り小さくした大きさですが、その精巧さには目を瞠るものがあります。

繊細な衣服の表現だけではなく、今にも動き出しそうな人物の表情からは深い精神性が感じ取れます。

これらの作品が丹念にデッサンから描き起こされて制作されたのではなく、木に大きくあたりをつけたくらいで一気に彫られているということに驚嘆せざるを得ません。

3章 森羅の生命

木彫家として熊を掘り続けた藤戸は作家としての円熟期を迎え、熊の他にも多くの生き物たちを彫るようになります。

熊や狼などはその毛の一本一本までが丁寧に彫られていて、木彫りであるのに呼吸しているかのような生命力を感じることができる作品でした。

他にも海の生きものであるクジラやラッコなど水の中の生きものが制作されています。

面白かったのはゾウリエビ、ロブスター、ヤシガニなどの甲殻類。

異なる彫り方によって、それぞれの表面の違いが表現されていました。

甲殻類はその体の構造から一つの木から掘り出すのではなく、体のパーツ毎に分け組み合わせて制作されています。

中には40ものパーツからできているものも。

木からできているとは思えないほどの精巧さでした。

4章 狼と少年の物語

壮年期を迎えた藤戸は絶滅したニホンオオカミに思いを馳せ、二ホンオオカミとアイヌの少年の物語を19にも及ぶ彫刻で表現します。

ニホンオオカミが生きていたときと同じ時代に生きた埋れ木を使った作品は渋いくすんだ色合いで、物語に奥行きと深みを持たせる味わい深いものとなっていました。

触れる熊たち

2017年に展覧会が開催された際にさわって楽しめるようにと制作された熊たちの展示。

手でふれると木の持つ温かみと熊たちの愛らしい姿が相まって、愛おしくなってきます。

藤戸の熊をとおした優しい愛情がこちらにも伝わってくるよう。

終章 終わらない旅

藤戸が死を迎える直前まで制作していた最後の作品。

彫りが荒削りで未完ではあるものの、静かに足元へ視線を落とす這い熊の様子は、この世での生を全うしカムイミンタラ(神の国)へ思いを馳せる藤戸自身のようにもみえます。

展覧会の混雑状況

平日のお昼時に行きました。

人の流れは絶えることがなかったものの、大勢の人がつめかけている感じではなく、一つひとつの作品をじっくり鑑賞することができました。

展覧会の所要時間

所要時間は1時間ほど。

キャプションが少なめで文字を追う時間よりも作品自体を鑑賞する時間がほとんどでした。

展示数が100点を超えるので、時間をかけてじっくりみるのがおすすめです。

展覧会の観覧料

一般1,300(1,100)

高大生800(600)

中学生500(400)

小学生以下無料〔要保護者同伴〕

※()内は各種割引料金、詳細は公式サイトへ

北海道立旭川美術館公式アクセスサイト

展覧会の会期&開館日・開館時間

会  期:2024.09.14(土) – 2024.11.17(日)

休 館 日:月曜日(月曜日が祝日または振替休日のときは開館、翌火曜日は休館。芸術週間中は開館)

開館時間:9:30-17:00

(展示室への入場は16:30まで)

アクセス&駐車場情報

〒070-0044 北海道旭川市常磐公園4046−1 

旭川市常磐公園内

℡:0166−25−2577

札幌からは車で約2時間。

駐車場:常磐公園内4箇所の駐車場が利用可能

北海道立旭川美術館公式サイト

周辺施設

常磐公園

旭川市中央図書館

旭川平和通買物公園

まとめ

お土産屋さんで昔よく売られていた木彫りの熊。

最近は見かけることが少なくなりましたが、阿寒湖アイヌコタンでは今でも多くの熊が作られています。

熊を彫り続け、単なる民芸品ではなく美術品として芸術性のある作品を作った藤戸竹喜。

美術館内の展覧会場外のフロアでは藤戸の亡くなった年に撮影された動画が流れていました。

その中で「本物の熊はかっこ悪い、つくり手によって見方が違う」と藤戸は言っています。

確かに実際の熊は頭が大きく不格好で、藤戸が作り出す熊とは似て非なるもの。

木から余計なものを取り除いていくだけ、という藤戸ですが、その写実性が卓越したものであること以上に、彼の想像力が素晴らしい作品の源になっていることは確かです。

森や海など自然の中の生き物や人の美しさ、強さ、生命に対する藤戸の深い感動が、作品を通してこちら側に伝わったとき、それはただの民芸品ではなく美術品となって見るものの心を震わせるのでしょう。

アイヌ文化や彫刻に関心がある方だけではなく、自然を愛する人には是非観てもらいたい展覧会でした!

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